特集企画−通なら知ってる蕎麦処舞台裏−

蕎麦の旨さの秘密を探して

そばの旨さを語るには、製粉屋さんの存在を忘れてはならない。
美味しい蕎麦の秘密を知るため、「丁寧なそば粉作り」と定評のある株式会社宮川製粉を訪問した。

宮川製粉の貯蔵庫
大型体育館程の広さの貯蔵庫は、伝統的ななまこ壁があしらわれており、日本独特の美しさを放つ。
 

そば粉が出来るまで

仕入れた玄そばは、貯蔵→製粉→出荷の過程を経て蕎麦処へ提供される。 良質な原料を、最大限良い状態で各地の蕎麦処まで届けるため、宮川製粉では各過程で独自のこだわりと工夫を凝らしている。
今回は、その一部をご紹介しよう。

仕入れ

蕎麦の約8割が輸入に頼る中、宮川製粉では国産蕎麦にこだわる。 2009年3月末現在の仕入れの内訳は、北海道産が7割、山形産が3割。
これらを9月〜12月の新そばの季節に1年分まとめて仕入れている。
都度仕入れではなくまとめて仕入れるのは、収穫から製粉までの蕎麦の保管状態が、 蕎麦粉の品質に大きく影響するためである。
収穫後すぐに、自社独自の徹底した管理の元、貯蔵を行う必要があるのだ。
収穫量はその年の気候に大きく左右されるため、都度仕入れと違って仕入れ量などの調整が 難しくなるが、美味しい蕎麦を提供するためには譲れないという。
宮川社長は生産農家へ直接出向き、契約栽培で丁寧に育まれた玄そばを仕入れる。
生産農家との信頼関係があってこそ、良質な蕎麦を仕入れることができるのだ。
また、地元を愛する想いも深く、「山形産蕎麦を広めたい」と、仕入れの5割を山形産にしていく方針だそうだ。


貯蔵

玄そばは、近年新設された貯蔵庫で管理されている。
貯蔵庫には以下の四つの部屋がある。
それぞれの部屋が、蕎麦本来の香り・風味を保つための重要な役割を果たしている。

「壱」の部屋
壱の冷凍倉庫
仕入れた玄蕎麦は、まず壱の部屋へ運ばれる。
ここは-20度に保たれた、言わば冷凍庫。生きた蕎麦の実の、鮮度を落とさないための工夫である。
写真は倉庫の扉を開いたところ。厚いビニールカーテンは冷気が漏れないための工夫。この奥に、約4千俵が収まる。
「弐」「参」の部屋
弐・参の冷蔵倉庫
必要とされる蕎麦粉の量と時期により、壱の部屋から必要な分だけ運ばれる。約1万5千俵収まるこの部屋は、室温約14度・湿度約18%に保たれている。
仮眠状態であった玄蕎麦をゆっくりと常温に近づけ、目覚めさせるのだ。
「四」の部屋
四の常温倉庫
弐・参の部屋から移されるこの部屋は、常温倉庫。製粉前の最後の保管過程だ。温度や湿度は季節に合わせて調整している。
ここでは3週間程度保管され、鮮度を保ったまま製粉所へ運ばれていく。
 

これまでの工程は、約2ヶ月かけて行われる。
徐々に常温に戻された蕎麦の実は、収穫時さながらの鮮度を保ちつつ、最も旨いと云われる水分量、約16%に調整される。
日本古来の「雪室」の知恵と宮川社長の工夫による、業界屈指の保管方法である。
また、1年後の仕入れ時までにはすべての在庫が出荷されるため、貯蔵庫内には新鮮な蕎麦のみが保管されている。


製粉

一口に製粉といっても、その過程は非常に細かなものであるが、大まかには「精選」「製粉」「篩(フル)い」の三つの工程が中心だ。
「精選」では、篩いや磁石、重量差、大型扇風機、金属探知機、色彩選別機などで雑菌やごみが取り除かれ、さらに粒の大きさで、大・中・小・微粒に選別される。
規定に満たない大きさものは全て取り除いてしまう。勿体ないと思われるかもしれないが、蕎麦粉の品質の良し悪しを左右する重要な工程なのだという。
脱皮機で殻と実に分けた後、製粉へ進む。

「製粉」は石臼式製粉機、ロール挽きの2つの方法で行われている。
いずれも熱と湿気、そして風が最大の敵。空調管理にはとても気を遣うそうだ。
石臼挽きは、その中に実を閉じ込めてひくためそば粉の香りがとぶことなく、また低速回転によって生じる粒子の不均一さが、独特の風味を醸し出すそう。

製粉の後、空気を使った輸送パイプにより、篩い工程へと衛生的に運ばれる。
袋詰めの前に篩いにかけて、より細かな粉のみ取り出すそうだ。

精選をする装置
精選には、建物の一階と二階部分を隙間なく埋めるほどの装置を使用する。建物中に太いパイプが張り巡らされている光景は圧巻である。
この工程の重要さを物語っているといえよう。
 

出荷

貯蔵から製粉までの徹底した管理方法をご紹介してきたが、もちろん出荷時も管理を怠らない。
生きた蕎麦粉の新鮮さを保つため、夏場はクール便で出荷する。
また、できるだけ美味しいそば粉を提供するため、粉を卸す蕎麦処へは一週間でこなせる量を都度注文いただき、冷蔵庫で保管するようお願いしているそうだ。
徹底された品質管理は全て、蕎麦への愛情。
地道な努力が美味しさに変わる瞬間が愉しみである。

出荷の様子
 

厳しい品質管理が美しさの秘密

「蕎麦はちょっとしたことで味が変わってしまう、非常に繊細で敏感なものなんです。だからごまかしが一切できないんですよ。丁寧に慎重に扱わないといけないんです。」と宮川社長。
生き生きとした瞳に、並々ならぬ蕎麦への愛情と自信を感じた。

◆イベント情報◆

毎年恒例の「宮川製粉 新そばまつり」は、9月の最終日曜日に行われます。2008年は県内外の10の蕎麦処が協力して打った、打ちたての新そばが味わえました。
蕎麦好きの皆様、是非ご参加ください!


宮川社長
株式会社 宮川製粉
山形県寒河江市中央工業団地166
お問い合わせ
TEL : 0237-84-2539